日系企業では4月に賃金改定を行なうケースが多いようです。今号では、この時期にお問合せの多い賃金改定ついてご案内します。
賃金管理と世間相場水準 「賃金管理」の要点は『自社従業員の賃金を自社の人事ポリシーにそって「世間相場水準」と調整したうえで、「適正な社内格差」を生じさせ、従業員のモチベーション向上に影響させること』です。この要点に従って賃金改定手続きを考えると原則は次の通りとなります。
(1)賃金体系を見直す:ここでいう賃金体系とは、職務をグレードに分け、賃金テーブルを作っていくことを意味しています。
(2)賃上げの原資を確定する:会社の業績、世間相場から決定する企業もあれば、従業員のリテンションをまず考慮して決定する企業もあります。
(3)まずその原資を、賃金格差是正(世間相場水準と社内格差)に使う:できる人・残って欲しい人にあつく報いることを前提に考えますが、あまりリテンションだけを考えると世間相場水準からずれていくこともあります。
(4)次に各従業員の職務およびその遂行能力評価等により、個別の昇給を行なう:職務の大きさとその遂行能力のレベルを評価していきます。
(5)まだ原資が残っていればベースアップとして使う:消費者物価の動きに伴うベースアップは検討することになりますが、これを最初にもってくると、社内格差をつけにくくなります。
賃金管理は、会社に必要な「人」にフォーカスするのか、その「職務」にフォーカスするのかといえば、原則は「職務」です。人ではなく、その職務価値が世間相場水準と比べてどうなっているのか。たとえば、同様の求人からサラリー・レンジを調べたり、実際に募集したときに採用できる給与がその職務の世間相場水準となります。
賃下げと推定解雇 評価の結果による賃下げ自体は違法ではありません。ただし、賃金は、職務・就業場所とあわせて雇用契約の根幹を成す重要な労働条件といえます。これらの労働条件を、会社が従業員の同意なしに、かつ容認する旨の雇用契約上の明示条項なしに、一方的に従業員にとって不利なものに変更した場合、従業員がその雇用契約を即時に解除する権利が与えられます。これが「推定解雇(Constructive Dismissal)」と呼ばれている雇用保護です。なお、この場合、労働者側からの雇用契約解除(自己都合退職)であるにもかかわらず、会社都合解雇として扱われることになります。
よって、賃下げを行なう場合、従業員が離職する可能性があること、また、離職にともなって会社都合解雇として解雇補償を行なうことを覚悟のうえ、賃下げを行なうこととなります。
通知のポイント 従業員との面談時に評価結果、決定事項を伝えます。通知は口頭でも有効ですが、やはり書面をおすすめします。特に賃下げ時には通知書よりも契約書の裏書(Endorsement)を交わしておく方がよいでしょう。
評価は「ノー・サプライズ」が原則です。ノー・サプライズとは、「そういう期待や要望であるとは知りませんでした」というような従業員のコメントが出てこないことを意味します。ここでは日ごろの信頼関係の構築や日常の評価のフィードバックがしっかりできているかどうかが、評価結果の納得や理解を生む重要な要素になるでしょう。
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コンシェルジュ香港 08年3月号掲載